■公的年金の不足分を補うのが個人年金保険の目的
個人年金保険は、老後資金を準備するためにつくられた保険です。
払い込んだ保険料は一定期間運用され、指定した年齢から年金が受け取れる仕組みになっています。
一般に、老後の所得を保障するものとして公的年金があります。
サラリーマンの場合、国民年金と厚生年金に加入していますが、自営業者などは国民年金のみで厚生年金には加入できません。
老後の生活は公的年金だけでは必ずしも十分とはいえない状況です。老後資金をつくる方法は、預貯金や投資信託などいくつかありますが、個人年金保険もその選択肢の1つです。
■個人年金の受け取り方の4つのパターン
個人年金保険の年金の受け取り方には次の4つがあります。
(1)10年、15年などの支払期間を定めて、年金受取人が生存していることを条件に年金が受取れる「有期年金」、
(2)年金受取人の生死に関係なく一定期間だけ年金が受取れる「確定年金」、
(3)年金受取人が死亡するまで年金が受取れる「終身年金」、
(4)夫婦のどちらかが生きている限り年金を受け取れる「夫婦年金」です。
年金受け取り開始前に年金受取人が死亡した場合は、それまでに払い込んだ保険料程度の死亡給付金が遺族に支払われます。
また、「保障期間付」の場合は、保障期間中であれば年金受取人が死亡しても、遺族が代わりに年金を受け取れます。
■個人年金保険の税法上の特典
○個人年金保険には、所得税や住民税の負担が軽減される生命保険料控除(所得控除)という税法上の特典があります。
生命保険料控除とは保険料の支払いに応じて、一定の金額が保険料負担者の所得から控除される制度です。
年間の支払保険料が、その他の加入している生命保険とあわせて10万円を超える場合、所得税から一律5万円が控除されます。下記の条件をすべて満たす場合には、一般の生命保険料控除とは別の、個人年金保険料控除の対象になります。控除額は同様に最高5万円まで控除されます。つまり個人年金保険以外に死亡保障などの生命保険に加入していた場合、最高10万円の控除が受けられるのです。
<個人年金保険料控除が受けられる条件>
・年金受取人が契約者または配偶者のいずれかであること
・年金受取人は被保険者と同一人であること
・保険料払い込み期間が10年以上あること(一時払いは不可)
・年金の種類が確定年金、有期年金であるときは、年金開始日における被保険者の年齢が60歳以上で、かつ年金受取期間10年以上であること
○年金受取時にもメリットがあります。
例えば保険料400万円を一時払いして、60歳から10年間、確定年金で受取るケースを考えてみます。400万円が運用で600万円に増えていたとすると、年金額は年60万円になります。しかし、そのうち40万円は、もともと自分が保険料として支払った分なので必要経費となります。つまり差し引き20万円が雑所得になり、他に収入が多く、高税率を適用される人を別にすれば、課税所得が少なくなることもあります。
■個人年金保険の注意点
税法上優遇されている個人年金保険ですが、いくつか注意点もあります。
受け取りたい年金額と何歳から受け取るかを決め、予定利率と呼ばれる金利分をあらかじめ割り引いた保険料を支払う従来型の個人年金保険は、市場の金利が高い時期はよいのですが、現在のような低金利ではそれほど大きなリターンは望めません。
そのため、金融市場金利に連動して運用される利率変動型個人年金保険や、株式や債券などで運用する変額年金保険が注目されています。
しかし、外貨建ての利率変動型個人年金保険では為替リスクが伴ったり、変額年金保険では運用次第で年金額が決まるため、一部の商品を除いて受け取る年金額に最低保障がなく、元本割れの可能性もあります。
ひとくちに個人年金保険といっても、その運用の仕方や年金の受け取り方は様々です。どのような特徴を持つ商品なのかをしっかりと理解し、自分に合った商品を選ぶことが大切です。
■なぜ個人年金が必要なのか
日本が右肩上がりで成長していた一昔前までは、それほど老後資金について心配する必要はありませんでした。日本経済が成長している間は、給与は勤務年数と共に上がり、退職金をもらいながら、老後は生活水準を上回る公的年金が支給され、悠々自適な老後を送ることが可能だったのです。ところが、日本経済のバブル崩壊とともに古き良き時代は終わり、企業に実力主義制度が導入されると、かつてのような悠々自適の生活は難しくなりました。
この事態に追い討ちをかけるように、少子高齢化問題が加わり、公的年金支給額の削減・支給開始年齢の引き上げなど環境は一変しました。支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことを1つとってみても、サラリーマンの平成15年末における平均年金受給額は約270万円/年(社会保険庁調べ)ですので、単純に公的年金だけでも1350万円の年金受取額が減ることになります。これに、早期退職や退職金の減額分も含めると、総額で2,000〜3,000万円も減ることになり、これを自分で確保をしなければならなくなるのです。
この他にも1980年と現在の平均寿命を比較すると男性が73.35歳から78.64歳、女性が78.86歳から85.59歳へと、5〜6年も平均寿命が延びており、老後の生活資金も更に必要になってきます。こうして、老後の資金確保は自己責任への時代に突入したのです。
■老後に必要な貯蓄額
それでは、老後資金をまかなうために、預貯金だといくらぐらい必要なのでしょうか。
現在40歳の方と50歳の方を例にとって、必要貯蓄額を示しました。
年金受け取り開始前に年金受取人が死亡した場合は、それまでに払い込んだ保険料程度の死亡給付金が遺族に支払われます。
また、「保障期間付」の場合は、保障期間中であれば年金受取人が死亡しても、遺族が代わりに年金を受け取れます。
●平成18年時点で50歳(昭和31年生まれの人)
前提条件 夫:昭和31年生まれ(サラリーマン)・平均給与37万円・60歳で定年退職予定
妻:昭和31年生まれ(専業主婦)・60歳迄に厚生年金加入期間なし・国民年金第3号被保険者期間40年
定年後の収入・支出共に85歳の誕生日までとして計算
必要貯蓄額 3,844万円
定年後の収入 定年後の支出
年金種別 年金支給額 金額 費用項目 費用の内訳 金額
公的年金
(夫) 62〜64歳:122万円/年 4,306万円 生活費 月26.6万円×12ヶ月×25年間 7,980万円
65〜85歳:197万円 旅行・趣味 年間50万円×15年間 750万円
公的年金
(妻) 65〜85歳:79万円/年 1,580万円 予備費 子供の結婚資金・リフォーム等 1,000万円
収入合計 5,886万円 支出合計 9,730万円
参考資料:生活費は総務省「全国消費実態調査」
公的年金の計算:社会保険庁「自分でできる年金簡易計算」による
●平成18年時点40歳(昭和41年生まれの人)
前提条件 夫:昭和41年生まれ(サラリーマン)・平均給与37万円・60歳で定年予定
妻:昭和41年生まれ(専業主婦)・60歳迄に厚生年金加入期間なし・国民年金第3号被保険者期間40年
定年後の収入・支出共に85歳の誕生日までとして計算
必要貯蓄額 4,210万円
定年後の収入 定年後の支出
年金種別 年金支給額 金額 費用項目 費用の内訳 金額
公的年金
(夫) 65〜85歳:197万円/年 3,940万円 生活費 月26.6万円×12ヶ月×25年間 7,980万円
旅行・趣味 年間50万円×15年間 750万円
公的年金
(妻) 65〜85歳:79万円/年 1,580万円 予備費 子供の結婚資金・リフォーム等 1,000万円
収入合計 5,520万円 支出合計 9,730万円
参考資料:生活費は総務省「全国消費実態調査」
公的年金の計算:社会保険庁「自分でできる年金簡易計算」による
上の表の2つのモデルケースで定年後の収入面を見ると、50歳の人の年金収入が5,886万円、40歳の人だと5,520万円と、約360万円少なくなっています。
その理由は、平成6年の年金改正により順次支給開始年齢が引き上げられたため、40歳の人の年金受給の開始年齢が65歳なのに対し、50歳の人は62歳から受給できているからです。
定年後の支出面については、「生活費」、「旅行・趣味」、「予備費」の3つで考えています。生活費は前出の総務省の家計調査にあった、1ヶ月あたりにかかる生活費26.6万円を利用しています。60歳を定年と仮定し85歳までで計算しているので、その25年間にかかる生活費は、7,980万円になります。旅行や趣味などの娯楽費は年額50万円で15年間を想定しています。予備費とは、万が一のときのお金や子供の結婚資金など使用目的のあるもので、1,000万円としました。
収支計算をすると、50歳のケースでは9,730万円−5,886万円=3,844万円、40歳のケースでは9,730万円−5,520万円=4,210万円 老後資金が足りないことになります。この金額が60歳までに用意すべき必要貯蓄額になります。
■個人年金を利用した生活設計
それでは、60歳までに必要になる多額の老後資金をどのように準備していけばよいのでしょうか。
今回は、生活費の不足部分について個人年金保険を利用して準備する方法をご紹介します。より多くの老後資金が必要な40歳のケースを例にとって見ていきましょう。
現在40歳の人は60歳で定年になり、年金が受給される65歳までは無収入の状態になります。65歳以降は夫婦共に年金が受給できますが、1ヶ月あたり23万円なので、先ほどの26.6万円と比較すると、3.6万円の生活費が不足することになります。
そこで、公的年金では足りない部分を個人年金で補う方法を考えていきます。
例えば、60歳から65歳までの無収入の部分については、1ヶ月あたり26.6万円の年金受取額で5年の確定年金に、65歳以降は、1ヶ月あたり3.6万円の年金が受取できる夫婦年金に加入するといった方法があります。65歳以降の個人年金保険については、年金受給期間が10年以上になるので、個人年金保険料控除の要件を満たす商品に加入し、税法上のメリットを享受するという選択肢もあります。
また、リスクは高くなりますが外貨建ての個人年金など予定利率の高い商品を選ぶことで、より少ない保険料で多くの年金を受給するという方法もあります。その場合、元本割れになってしまったときには預貯金で対応するなど、対策は検討しておく必要があります。
生活費の不足分にリスクの高い商品を利用するのはあまりお勧めできませんが、旅行や趣味など娯楽費を補うものとして利用するのであれば、日常生活に直接影響を及ぼさないので、適しているといえるかもしれません。
収入や支出の変化に対応して老後の生活設計を行なっていくと、その時々にあった商品の選択や家計の見直しも考えやすくなります。定年時に退職金をある程度もらえるという方であれば、無収入の5年間をそれで補うことも可能です。
まずは、ご自分でシミュレーションを行ない、必要貯蓄額を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。ご自分に合った個人年金商品の検討し、より良い老後のライフプランを設計してみてください。
■より良いセカンドライフを送るためには
先ほどご紹介したモデルケースはあくまで一例であり、例えば老後は物価の安い国で暮らすというようなプランをお持ちの方は、もっと少ない貯蓄額で済むでしょう。
ここで大事なのは、老後はどのような生活を送りたいかを具体的にイメージをすることであり、その考え方によって必要貯蓄額も変わってきます。そのためにも、退職する前に日頃から夫婦でしっかりと話し合いをしておいてください。
定年後の自由な時間は男性だと約10万時間(14時間×365日×20年間)、女性だと約13万時間(14時間×365日×26年間)もあります。
会社で40年間働いた場合の総労働時間が約10万時間(8時間×6日/週×52週間×40年)ですので、それに匹敵する膨大な時間になります。
個人年金加入の検討とあわせて、この膨大な自由時間をどう有効に活用し、楽しいセカンドライフを送るか、といったことも考えてみてはいかがでしょうか。
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